Paris Match/Saturdayのサビでも採用されているコード進行のパターンと分析

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コード進行

B♭M7 | B♭M7 | Am7 | Am7 |
E♭6 | Dm9 | A♭M7 | Gm9 |
B♭M7 | B♭M7 | Am7 | Am7 |
E♭6 | Dm9 | A♭M7 | Gm9 |
A♭M7 | G♭M7 | AM7 | GM7 |
A♭M7 | A♭M7 |

ディグリーネーム

ⅣM7 | ⅣM7 | Ⅲm7 | Ⅲm7 |
♭Ⅶ6 | Ⅵm9 | ♭ⅢM7 | Ⅱm9 |
ⅣM7 | ⅣM7 | Ⅲm7 | Ⅲm7 |
♭Ⅶ6 | Ⅵm9 | ♭ⅢM7 | Ⅱm9 |
♭ⅢM7 | ♭ⅡM7 | ⅢM7 | ⅡM7 |
♭ⅢM7 | ♭ⅢM7 |

機能

SD | SD | T | T |
SD(同主短調の第7のコードをシックス・コード化、ドミナント・マイナーⅤm7と共通の構成音、下属調のトゥーファイブ進行の起点Ⅱm7) | T(下属調のトゥーファイブ進行のⅤを一部含む) | T(同主短調の第3のコード) | SD(次のⅣM7を含む) |
SD | SD | T | T |
SD(同主短調の第7のコードをシックス・コード化、ドミナント・マイナーⅤm7と共通の構成音、下属調のトゥーファイブ進行の起点Ⅱm7) | T(下属調のトゥーファイブ進行のⅤを一部含む) | T(同主短調の第3のコード) | SD(次のⅣM7を含む) |
T(同主短調の第3のコード) | (♭ⅢM7から長2度下へスライド) | (♭ⅡM7から短3度上へスライド) | (ⅢM7から長2度下へスライド) |
T(同主短調の第3のコード、ⅢM7から短2度下へスライド)| T |

分析

今回はFの長調を主調とした、非常に曖昧で浮遊感のあるサウンドの連なりと、鋭く突き刺すような和音の響きが特徴のコード進行です。テクニックとしては、同主短調の借用コード、シックス・コード、テンション・コード、コードのスライドが登場します。
まず、1~4小節目では「ⅣM7→Ⅲm7」とコードが進行します。これは、サブドミナントのⅣM7からトニック代理のⅢm7へと下る進行です。このように、今回のコード進行は基本的にはⅣM7から下行していく進行ですが、その響きは非常に複雑です。
次に、5~8小節目では「♭Ⅶ6→Ⅵm9→♭ⅢM7→Ⅱm9」とコードが進行します。このうち、♭Ⅶ6は同主短調の借用コード♭Ⅶあるいは♭Ⅶ7をシックス・コードにしたものです。シックス・コードのC6(Ⅰ6)がAm7(Ⅵm7)と共通の構成音になるように、ここでの♭Ⅶ6はドミナント・マイナーⅤm7と共通の構成音を持ちます。
そして、Ⅵm9はⅥm7に長9度の音を付加したコードで、Ⅵm、Ⅵm7、Ⅰ、ⅠM7のコードを内包しています。そのため、♭Ⅶ6(Ⅴm7)とⅥm9(Ⅰを含む)は、ⅣをⅠとする下属調のトゥーファイブ進行「Ⅱm7→Ⅴ」(Ⅴm7→Ⅰ)を形成していると考えることもできます。ただし、次に登場するコードは♭ⅢM7なので、このトゥーファイブ進行とドミナント進行は解決されません。
それから、次の♭ⅢM7は同主短調の借用コードです。ただし、ここではメジャー・コードの明るさより、メジャー・セブンス・コードの冷たく鋭い響きが目立ちます。また、Ⅱm9はテンション・コードで、Ⅱm、Ⅱm7、Ⅳ、ⅣM7の響きを含みます。そのため、Ⅱm9は次のⅣM7の構成音を完全に内包しており、響きの大きな変化はありませんが、コードがスムーズに繋がります。
その後、9~16小節目は1~8小節目の繰り返しです。
次に、17~20小節目からは「♭ⅢM7→♭ⅡM7→ⅢM7→ⅡM7」というコード進行が現れます。これは、機能的に進行するカデンツというよりは、メジャー・セブンス・コードがスライドすることで生み出されたようなカデンツです。そして、ここではメジャー・セブンス・コードの強気で冷たさも感じるような響きが連続し、前面に出ています。
こうして、最後の21、22小節目では♭ⅢM7が繰り返されます。♭ⅢM7もまたメジャー・セブンス・コードの連続で現れたコードですが、同主短調の借用コードであり、トニックの機能を持ちます。そのため、非常に落ち着かない雰囲気ではありますが、一応はトニックに着地し、コード進行が一区切り付いています。

まとめ

今回のコード進行では、同主短調の借用コードやテンション・コードを交えた、全体的には浮遊感のある響きが印象的でした。ただし、コード1つ1つはテンションや7度の影響を受け、鋭く眩しいような響きへと変化しています。そのため、流して聴くと曖昧でふわっとしていますが、コードに注意して聴くと途端に鋭い響きが刺さります。
コードを個別に見た場合、♭Ⅶ6が参考になります。この♭Ⅶ6は同主短調の第7のコードであり、第5のコードと共通の構成音を持ちます。このように、借用されたコードがそのコードの属するスケールに沿って変化することは良くあります。
細かいカデンツで見た場合、「♭Ⅶ6→Ⅵm9」は裏返るようなドラマティックな響きが特徴です。また、「♭ⅢM7→Ⅱm9」は借用コードとテンションの組み合わせによる響きが強烈です。そして、「♭ⅢM7→♭ⅡM7→ⅢM7→ⅡM7→♭ⅢM7」では、メジャー・セブンス・コードの強気で冷たい響きが続きます。
このように、今回のカデンツは共通して劇的ですが、機能的な繋がりはあまり感じられないのが特徴です。これは、緊張感を生むコード外の音を持つ、テンション・コードの基本的な性質の1つです。

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